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「エロス ~もう一つの過去~」 / 広瀬正 

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長らく絶版状態になっていた広瀬正の著作が、10年振りに集英社文庫から復刻さ
れています。7月に再販されたのが「マイナス・ゼロ」で、8月「ツィス」、
そして9月には「エロス」が予定されているようです。

以前「マイナス・ゼロ」を紹介しましたが、今回はこの「エロス~もう一つの過去」
について。

まずタイトルの「エロス」ですが、これはそっちの意味では全くなく、愛の女神
エロスのこと。作品中では主人公の一人が作った曲名として出てきます。
星新一さんの解説でも述べられていますが、広瀬正作品はどうもタイトルで損をして
いるようです。この作品に「もう一つの過去」とサブタイトルが入っているのは、
編集側の意見かもしれません。

ストーリー的には典型的な「パラレルワールドもの」に分類されます。
「もしもあのときこうしていたら...」という<もうひとつの過去>と<実際の過去>
とが並行して描かれて行きます。そして最後に...。

舞台は広瀬正が得意とする昭和初期の東京。「マイナス・ゼロ」もそうですし、
「遊覧バスは何を見た」(「鏡の国のアリス」所収)もそうですが、この時代の
精緻な描写はすばらしいものがあります。
推理小説も書いた彼らしく、最後のドンデン返しも完璧です。

しかしこうやって日本SF草創期の作品を改めて読み返すと、その完成度の高さは
目を見張るものがありますね。小松左京、筒井康隆、星新一、豊田有恒、眉村卓、
平井和正、半村良、梶尾真治...。

その中でも広瀬正は「昭和初期SF」とも言うべき独自の世界観を築いた稀有な
作家だと思います。何度も直木賞の候補作になりながら落選したのは選考委員
の作家達がSFという新しいジャンルを理解していなかったからなのでしょう。
その中でもただ一人、この小説を推したのが司馬遼太郎だったというのは何か
納得出来る気もします。

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